上司ガチャを外すとしんどい。
これは、私のようなHSS型HSPに限った話ではないと思う。嫌な上司と働いて「やったー!」と思う人は、相当な変わり者だ。
少なくとも、私は嫌いな上司と働くのは嫌だし、顔を見るだけでネガティブな感情が出てくる。
残念ながら、会社員として働いていたら「よい」と感じる上司もいれば「悪い」と感じる上司もいる。
相性なども関係してくるので一概にいえない部分はあるものの、パワハラ・モラハラ・セクハラなどのハラスメント気質がある人が上司になると、しんどい思いをすることになるだろう。
会社員の場合、自分で上司を選ぶことはできない。完全にガチャである。上司ガチャはどの会社でも存在するので、まさに運勝負になってくる。
私も上司ガチャを外して苦労した経験がある。なんなら、今の職場でも上司ガチャを外している。
今の上司が他部署から異動してきた当初は、だいぶ苦労した。心の底から「この人とは合わない」と感じたものである。
しかし、今は割と平穏に暮らせている。
そこで今回は、上司ガチャを外したとき、私が具体的にどのようなことをしたのかお伝えしていこうと思う。
上司との関係に悩んでいるなら、参考になれば嬉しく思う。

まず結論をお伝えすると、直属の上司と折り合いがつかない場合は、上司よりもさらに上の役職者(上司の上司)や人事に相談したほうがいい。
「もうどうにもならない」という場合は、心療内科の受診をおすすめする。あきらかにメンタルに変調をきたしている場合は、病院側も診断書を書いてくれるはずだ。
病院の診断書があると、会社側の対応も驚くほど変わる。これは私自身の体験ということではないが、以前チームメンバーがメンタルに変調をきたしたときに病院の診断書を会社に提出したら、すぐに休職になっていた。
企業側も、よほどのことがない限り診断書を提出した社員を放置しない。そのような会社だとしたら、完全にブラック企業だ。すぐに退職することをおすすめする。
とはいっても、まだそこまでではないという場合も多いと思う。
上司と馬が合わないけど、仕事自体は好きだし、会社はやめたくない。でも、できれば人間関係のトラブルは解消して気分よく働きたい。そういう状況の方はとても多いと思う。
そんなとき、ポイントになるのは上司がどのような人なのかを見極めることだ。上司のタイプによって改善策が異なる。
上司が何を大事にしていて、どのような思考回路で意思決定を下しているのか。ここが分かると、対策が立てやすくなる。
多くの人は、一度嫌いになると拒絶反応が出てしまい、そこから相手のことを深く分析しなくなる。それはもったいないと思う。
上司が嫌な言動をしてきたときに「なぜこの人は、このような言動をするのだろうか」と考えてみてほしい。
たとえば、こちらが意見を言っても、すぐに否定するタイプの上司だったとしよう(私の上司がまさにこれ。便宜上Aさんと記載)。
そのときに「なぜAさんは否定から話し始めるのだろうか」と考えてみるのである。仮説を立てるための情報が足りない場合は、普段の行動にも注目してみるとよい。

私の上司Aさんの場合、普段から人をこき下ろすことが多い。
自身よりも立場が上の人に対しても、本人がいないところで「あいつはものを知らない」「あいつはペテン師だ」などと平気で言ったりする。しかし、本人の前では決して言わない(部下に対しては目の前でガンガン言う)
とてもせっかちで、議論になると早口でまくし立てるように話し続ける。「論外ですよ」が口癖だ。
会議では、人の意見を聞くよりも、ずっと自分が話している。話の内容は、売上・利益・販売数などの数字の話が多い。会社や自分の利益にならないことは極端に嫌がる。デザイン・コンセプト・世界観など抽象度の高い話はほぼしない。
業務を部下に丸投げすることも多い。業務を振るときは絶望的に言葉が足りないので、何度も確認が必要になる。
このように、Aさんの普段の言動を観察していくと、いろいろな仮説が立てられるようになっていく。
- 本人の前で悪口を言わないことから、ビビりで小心者なのかもしれない
- 自分が話してばかりということは、潜在的に自分の話を聞いてほしいと思っているのかもしれない
- 相手の意見を受け入れないのは、プライドが高く、自分の考えが正しいと思っているからかもしれない
- 数字の話ばかりするということは、数字に強く、俗にいう左脳型のタイプだと推測できる。抽象度の高い話は利益と結びつけることが難しいので、興味を示さないのかもしれない
- 丸投げしても業務が回ると思っている。必要な情報を共有するという認識がないのかもしれない
このように、日頃のAさんの言動から「何を大事にしていて」「どのような思考プロセスでその言動に至っているのか」の仮説を立ててみるのだ。
ポイントは「事実をベースに仮説を立てること」だ。事実を起点にすることで、第三者に相談するときも、事実と解釈を分けて伝えることができる。そのほうが相手も判断がしやすい。
Aさんの場合は、自身のプライドや立場を守るために、相手の意見を否定しているのだと考えられた。相手を否定することで、自身の立場を上に見せたいのだろう。
実際、前の部署では営業をしていて、成績がよかったと聞いている。しかし、部下からの評判はよくない。「あの人は営業はできるけど、マネジメントは一切できない」と以前一緒に働いていた部下が言っていた。
おそらくAさんのなかのセルフイメージと現実の評価に乖離があるため、そのギャップを埋めるために自身を高く見せようとしているのだと考えられた。
最初、私はAさんのプライドを傷つけないように、自分の主張をきちんと伝えるように努めた。しかし、私の力量不足もあって、それはうまくいかなかった。
Aさんは、営業畑で成績もよかった。営業職は、成績がよい人の影響力が特に強い。そのため周りにはイエスマンが多くなり、多少横暴な対応をしても、まかり通っていたと考えられる。
「横暴な対応でも問題ない」が彼のデフォルトになっているのだとしたら、下からの意見を真摯に受け止めてくれる可能性は低い。
しかし、それでは困る。
私が所属しているのは企画や開発の部署なので、内容をブラッシュアップさせるために意見が衝突することは多々ある。そのたびに否定が前提の話をされては、たまったものではない。
部下からの意見を受け入れてくれないのであれば、取れる手立ては限られている。私は、Aさんよりも上の役職者に現状を相談するようにした(ここでは便宜上Yさんと記載)
本来の業務フロー上ではマナー違反だが、このようなケースでは仕方がないと割り切った。自分の身を守るためだ。
直属の上司とどうしても馬が合わないときは、上司を飛び越えて、さらに上の上司に相談したほうがいいと思う。

Yさんには、現状を事実ベースで伝えたうえで「Aさんとは一緒に働けない。部署異動させてほしい」と素直に伝えた。
何度かYさんに相談した結果、部署異動は叶わなかったが、直属の上司とは別のチームで働けることになった。
業務が切り離されると、直接やり取りする機会は大幅に減る。働きづらさやストレスも激減した。
私が相談をしていなければ、今回の結果を手に入れることはできなかっただろう。誰にも相談できない状態が続けば、メンタルが擦り切れていたかもしれない。
このように多角的に情報を取り、仮説を立てていくと対策も立てやすくなる。「◯◯を試してみたらどうだろう」という風に、試行錯誤を繰り返していけるのだ。
さらに、嫌な言動が発生する条件を分析するのも効果的だ。
たとえば、Aさんの場合は「外部との打ち合わせのときに部下をこき下ろす」「イベント準備など急かされる状況になるとヒステリックになる」などだ。
せっかちと繊細という要素が組み合わさっているので、急いで準備や撤収を行う展示会やイベント出展の際には、イライラの感情を周囲にぶちまけていく。
嫌な部分の発生条件が分かれば、それを避けるように動くこともできる。もちろん、会社員であれば全部を避けることはできないが、嫌な思いをする頻度は減らせるはずだ。
嫌いな上司に直面したとき「あの人は口が悪い」「あの人は話を聞いてくれない」など、嫌なところがたくさん目につくと思う。ただ、これだけだと解像度が低い。
上司に対する解像度を上げて、対応策を考えたほうがいい。嫌いな上司の言動を観察するわけなので、ネガティブな感情は出てくると思うが、確度の高い対策を講じるには情報が必要だ。
「この人は、なぜこんな言動を取るのだろうか」
「この人は、何を大事にしているのだろうか」
「嫌な面が出るのは、どのような条件が揃ったときだろうか」
上司を観察すると、いろいろな仮説が立てられる。そして、仮説の結果次第では、歩み寄るべき人なのかも判断しやすい。
世の中には、人を踏みにじることに愉悦を感じる人も一定数いる。そのような人であれば、早急に距離を置いたほうがいい。
ほかにも「あまりにも自己中心的な考えを持っている」「否定癖が直らない」など、マイナスの要因が大きい場合も同様だ。冷徹に聞こえるかもしれないが、歩み寄るメリットは薄い。
幸せに生きていくためには、良好な人間関係はマストだ。必須項目といってもよい。会社員の場合、職種よりも人間関係のほうが幸福度に影響を与えるともいわれている。
他人を変えることはできないので「この人とは合わない。無理だ」と思ったら、その人と距離を置いたほうがいい。
会社からの評価は下がるかもしれないが、そんなものはなんてことない。自分のメンタルを守ることのほうが圧倒的に大切だ。
結局、どんな仕事であっても幸せになるためにやるものだ。自身が幸せを感じられないのであれば意味はない。
ぜひ、ご自身を大切にしてほしい。
ふくきた

